【プリキュア落語】 胴切り

落語の中には現実味が無い噺もたくさんあります。
そんなリアリティがない噺の中から『胴切り』です。
「そんな事ありえない」と言われてしまったらそれまでです。
そもそもそんな噺をパロディにする『プリキュア』自体も実在しないわけですし。
こちらの噺はオリジナルからかなりアレンジしてます。
興味がありましたら、是非オリジナル版を楽しんでみてください。


深夜、仕事が遅くなり帰宅を急ぐ美希。
美希「早く家に帰らないと…」
と足早に歩いていると、電柱の影から金髪にスーツ姿の中年男性がぬっと現れてきました。
美希「何!?」
ヒッと身構えた後に良く見ると…その男は顔は真っ赤、手には鮨詰めの箱、さらに頭にネクタイを巻いている。
美希「なんだ酔っぱらいか、無視無視」
とスタスタと通り過ぎようとした時、その男から
ブンビー「おい、お前!お前もブンビー様を無視するってのか?あ?」
半分ろれつが回ってない様子で声かけられてしまったのでした。
美希「何の用ですか?変な事したら警察呼びますよ!?」
ブンビー「警察ぅ?警察ごときに止められるわけがないだろう。俺はあのプリキュアを相当苦しめたブンビー様だぞ!?」
と何故か誇らしげに胸をはる。
それに対して、美希はプリキュアと聞いて「只者ではない」と察する。
ブンビー「まあプリキュアを連れてこない限りは俺は…」
と言いかけた所で、
美希「残念ながら、プリキュアならここよ!プリキュア ビートアップ!…ブルーのハートは希望の印。つみたてフレッシュ キュアベリー!」
と颯爽にキュアベリーに変身。
ブンビー「ええっ!?プリキュアがどうしてここに!?…」
と驚くブンビーに対して、さっさと家に帰りたいベリーは
ベリー「響け、希望のリズム!キュアスティック ベリーソード!」
と早速アイテムを取り出した所で、ブンビーにいちゃもんを付けられた。
ブンビー「って、え?それがソード?」
美希「そうよ?」
ブンビー「ソードって割に、全然切れそうに見えないじゃないか」
と言われてしまい、ベリーも
ベリー「そう言われてみれば…ピーチ達のロッドやフルート、ハープに比べて何で私だけソードっぽくない武器なんだろう」
と考え込んでしまう。
プリキュアの登場で焦ったブンビーも、もう一度ふんぞり返り
ブンビー「そんなもので俺が倒せると思ってるのか~?ソードなら、俺の切ってみろい!」
と見得を切ってベリーの前に立ちふさがるブンビー。
相手の挑発に乗るのは気が乗らないが、ここは試しとベリーソードを構える
ベリー「ソードなんだから…やれるわ!えーい!!」
と、ブンビーの腰の辺りをズバッと真一文字に切った!のだが
ブンビー「おおっ…お?何ともない…ほらやっぱり切れないじゃないか!」
と、ブンビーは何とも無い様子。
ベリー「や、やっぱりソードとして使えないんだ…」
とうな垂れるベリー。
それを見たブンビーは更に上機嫌になって
ブンビー「まあ、今日の所は許してやるよ。ほらさっさと帰れ帰れ」
と言い残して、ベリーをよそ目にブンビーは千鳥足で明後日の方向へ帰っていった。

さてその翌日。
昨日の件で美希のテンションがとても低かった…という方はさておき、問題なのはブンビーの方。
ブンビー「なんじゃこりゃー!?」
ブンビーが目を覚ましたら、上半身と下半身が真っ二つになってるではありませんか。
冷静になって考えるブンビー。
ブンビー「昨日は居酒屋で酒を飲んだ後…あれ、その後の記憶が無い。しかしどうやって帰ったんだ?」
どうやらベリーソードの切れ味があまりに良すぎたようで切れた事にまったく気がつかなかったらしい。
さらにズバッと切った後は、だるま落としの要領で下半身に上半身がストンと落ちてブンビーはそのままバランス良く家まで辿り着いたらしい。
そして家に着いた途端、床にバタン…下半身が倒れて上半身はゴロゴロと転がってしまった。
ブンビー「と、とりあえずこれからどうしようか考えなくては」
上半身と下半身が分かれたままでは、今までやっていた仕事も何も出来ない。
さてブンビーはこのピンチをどう切り抜けるのか?

とある公園にTAKO CAFEというお店がありまして、アカネとひかりの二人が毎日一生懸命たこ焼き等を売っておりました。
そんなある日…
アカネ「今日から新しいバイト雇ったよ」
ひかり「わあ、どんな方なんですか?」
と紹介されたのが、ブンビーだった。
しかし見た感じは普通なのだが
ブンビー「ブンビーです。よろしく…」
とお辞儀をしようとして、上半身と下半身のバランスが崩れそうになる。
ブンビー「っとと、危ない危ない」
慌ててバランスを取り直したものの、明らかに半分ぐらい前にブンビーの上半身がズレてる。
それを見たひかりは「ひいっ!」と叫び声をあげて
ひかり「あ、あのズレてますけど…」
アカネ「ああ気にしないでいいよ。上半分だけ働いてもらって、その代わりバイト代も半分でいいらしいから」
ひかり「上半分って…何をしてもらうんですか?」
アカネ「ずーっとたこ焼きを焼いてもらう事にしたよ。しかし世の中不思議な人間もいるもんだね~あはは~」
と、目が点になっているひかりの心配をよそにアカネはまったく気にしてない様子。
ブンビー「では早速、本場大阪で修行した腕を見せてやりますよ!じゃあ、下半身の方もあっちでがんばれよー」
と上半身が下半身に声をかけて、下半身はどこかへ走っていった。

そして下半身の方はどこへ行ったのかというと、また別の公園にあるに向かったのだった。
そこにはドーナツ屋がありまして、こちらもカオルというサングラスをかけた男性が毎日一生懸命ドーナツを売っておりました。
カオル「おお、来た来た。今日からバイト頼むよ~」
とブンビーの下半身がお辞儀、はできないのでまあ足をちょっと曲げて腰を下げるポーズをする。
さてこのドーナツ屋にはもう一人というかもう一匹、曲芸が売りのフェレットという事になっている『タルト』が働いております。
実はタルトも喋る事ができるんです。しかも関西弁で。
そんな二人のやりとり見て
タルト「ちょっと、足だけやで!?」
カオル「おじちゃんはそういう事は気にしないんだよ。フェレットがしゃべる事も気にしないからね」
タルト「ま、まあそうやけど…でも下半身だけで何をしてもらいますのん?」
カオル「そう思って作ってみたよ。題して、自転車で発電するマシーン!」
と、自転車を取り出した。
どうやらこれでドーナツを作る機械からすべてを自家発電して電気代を浮かそうという魂胆らしい。
それを見て、ブンビーの下半身は早速自転車にまたがりペダルを漕ぎ出した。
タルト「まあ、ええか。にしても色んな人がいるもんやなぁ…」

と、こうして上半身と下半身は無事に職につく事が出来たわけですが、仕事をしていく内に色々と問題が出てくるものです。
下半身が度々に発電用の自転車から離れてしまう…。
もちろん少しぐらいの休憩は許されるとはいえ、ずっとペダルをこぎ続けて疲れたからという理由ではなかった。
その理由が上半身にあるという事で、ある日下半身が上半身に文句を言った。
下半身「トイレが近くなるから、たこ焼きのつまみ食いはやめてくれ」





以下、ちょっとした補足。


ズバッと切って、その場で気がつく(上半身が飛んで桶の上に乗る)パターンもあります。
本来は上半身が『銭湯の番台をする仕事』、下半身は『踏んで麩の生地を作る仕事』に分かれます。
下げ(オチ)は上記と同じものが多いですが、「あんまり女湯の方を見るなよ。褌が痛むから」という下ネタバージョンもあります(個人的にはこっちの方が好き)。

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