今回はバトルともまったく関係のない記事です。
実はかなり前からプリキュアのパロディで落語をやったら面白そうというアイデアはあったのですが、ふとしたきっかけでそれがtwitterで少し話題が膨らんだのでとりあえず形にしてみました。
評判が良ければ数本書いて同人誌デビュー?もありえるかもしれません。
ご感想いただけると非常にうれしいです。
本当はもう少し話を広げたいのですが…読みやすく、かなり短めにしてあります。
『目黒の秋刀魚』――おそらく落語を知らない人でも聞いた事はあるんじゃないでしょうか。
舞台となっている目黒こと、目黒区ではさんま祭も開催されているほど馴染みのある噺です。
というわけで目黒の秋刀魚のプリキュアバージョン。
元々は秋刀魚を知らない殿様が主人公の噺なのですが、プリキュアバージョンでも同じように秋刀魚を食べた事のなさそうな水無月かれんさんが主役です。
ナッツハウスで一人、窓辺で憂鬱な顔をするかれん。
かれん「はぁ……」
とため息を一つ。
そして、その後に
かれん「また秋刀魚が食べたいわ……」
とまあ、こんな感じでここ数日かれんは口癖のように「秋刀魚が食べたい。秋刀魚が食べたい」と言い続けてみんなを困らせてます。
それを見る度に、りんも
りん「ああ、やっぱりあの時食べさせなきゃ良かったのかな」
とこちらも口癖のように言ってるわけで。
という事の発端は、つぼみ・えりか・いつき・ゆりの4人と一緒に目黒でバーベキューパーティーをやった時の事。
それぞれ2台のバーベキューコンロに別れたのですが、ここで明暗も大きく分かれます。
屋外でバーベキューなんてやった事がない食材担当のかれんは
かれん「冷蔵庫にあったお肉と野菜を持ってきたんだけれど……」
と松坂牛の超高級肉やら各地の新鮮野菜やらを持って来たものですから、隣で見ていた4人は気に入らない。
えりか「なによあっち超豪華じゃない!私もあっちで食べたい!」
つぼみ「こっちはそれぞれ買ってきた普通の食材……早くも大きな差がついてるみたいです」
いつき「仕方ないよ。でも向こうの食材はたくさんあるみたいだし、後で分けてもらえばいいんじゃないかな」
えりか「それグッドアイディア!じゃあこっちの分は無かった事にして、早速もらっちゃおう」
つぼみ「ダメですよえりか!ちゃんと全部食べてから貰いましょう」
とまあ、それなりに楽しんでる様子。
そんな中で、ゆりはというと
ゆり「家に冷凍の秋刀魚しかなかったのよ……」
バーベキューコンロの隅っこでと一人黙々と秋刀魚を焼き始めたのでした。
もくもくと煙が上がり、さらに秋刀魚のおいしそうな匂いがプーンとし始めた所で
かれん「りん、隣の方は黒い煙といい香りがするけど何を焼いてるのかしら?」
りん「ああ、あれは秋刀魚ですよ。かれんさんは食べた事ないでしょうけど」
かれん「秋刀魚……秋刀魚って何かしら?」
りん「魚ですよ。フツーの家庭では、あんな感じで焼いたりして食べるんですよ」
それを聞いたかれんが、さらに興味深そうに向こう側のバーベキューコンロを見る。
丁度秋刀魚の片面が焼けた所で、ゆりが慣れた手つきで秋刀魚をひっくり返すと表面がジューッといい音。
まあバーベキューをやるからと言って、元々かれんが食材を焼く事を手伝う気はないだろうとみんな思っていたわけですが、手伝わない上に自分達のコンロに興味がまったくないと酷い状況。
次第にりんとくるみが、もう向こうのコンロの方に移動させた方が自分達のバーベキューが楽しめるんじゃないかと思い始めてきた。
くるみが少しイライラしながら
くるみ「かれん、そんなに気になるなら普段食べた事の無い庶民の魚『秋刀魚』、一口だけでも食べさせてもらったら?」
と、相当皮肉を込めて言ったら
かれん「ええ、この機会にあの秋刀魚を食べてみたいわね」
とまあ意外にあっさりと答えた。
「そんな下品な事はしない」という答えを期待してたくるみは心底ガッカリしつつも、これであっちに追いやれるかと
くるみ「ほら、このお肉を渡して秋刀魚食べてきなさいよ」
と松坂牛の超高級肉をかれんに手渡すと、かれんは小走りにもうひとつの方コンロに向かっていった。
ずかずかと、唐突にやってきたかれんに驚く4人。
つぼみ「な、何でしょうか」
かれん「あの、もし宜しければこちらのお肉と交換という事でそのさ、秋刀魚を一口だけいただけませんか?」
いつき「秋刀魚?この秋刀魚?」
さらに唐突な事を言われて戸惑いつつも
ゆり「え、ええ……こんな秋刀魚でよければ、どうぞ」
そういってその秋刀魚を一口パクッと食べるかれん。
口の中に秋刀魚の独特の味わいが広がります。
かれん「ああ、おいしい……」
本当はもっと食べたい、もう目の前にある一匹全て食べたい……と言ってもそこはお嬢様としてのプライドを思い出しておいしい秋刀魚を一口で我慢をしたのでした。
そして戻ってきたかれんに
りん「秋刀魚、食べてきたの?」
かれん「ええ、一口だけだけど凄く美味しかったわ」
くるみ「そう、良かったね」
とまあそっけない返事。
その後は普通にバーベキューを楽しんだものの、その時食べた秋刀魚の味がどうしても忘れられないというかれん。
くるみ「私が余計な事を言っちゃったから……」
と、かれんを唆した事を少し反省しているくるみに対して、りんが
りん「やっぱりもう一度秋刀魚を食べさせるしかないかな」
と提案するのでした。
くるみ「それしかないわね」
と二人して秋刀魚をかれんに食べさせる事になりました。
とはいえ普通に秋刀魚を焼いて食べさせるのはもったいない、せっかくだからかれんには食べさせる直前まで秘密にしてサプライズをさせようと考えたわけです。
しかしこの秋刀魚という魚は色々な問題点があります。
りん「この間のように普通に焼いたら煙の匂いで秋刀魚焼いてるってバレちゃうよね」
くるみ「それに秋刀魚は骨も多いし、何より油が多いからかれんに食べさせるのは心配だわ」
りん「そんなに気にしなくても……」
くるみ「いえ、ダメよ。もしかれんに何かあったら私たちが責任を取らなきゃいけないし困るでしょう」
りん「確かに。お嬢様に変なものを食べさせて、後から慰謝料とか損害賠償とか請求されてもね」
と二人して考えた末に……
くるみ「そうだわ、秋刀魚を蒸せばいいのよ。蒸せば秋刀魚を焼いた時の匂いは出ないし」
りん「秋刀魚の骨を1本1本取って、さらに磨り潰してつみれ状にして食べやすくしよっか」
くるみ「それを入れたお吸い物にすれば……完璧な料理だわ!」
というわけで早速二人は『秋刀魚のお吸い物』を作り始めたのでした。
かれん「はぁ、秋刀魚……」
相変わらずの様子のかれんに対して、
りん「秋刀魚秋刀魚、ってまだ言ってるんですか」
とやや呆れ顔になりつつも
くるみ「そんなかれんの為に、二人で秋刀魚の料理を用意したわよ!」
と、聞くや否やかれんの表情が急に変わる。
かれん「えっ、私の為に二人が秋刀魚の料理を作ってくれたの?」
くるみ「これを食べたら、もう二度と窓辺で秋刀魚秋刀魚つぶやくの止めてよね」
かれん「ありがとう、私の為に……心配をかけてごめんなさい。二度としないようにするわ」
とかれん自身も反省。
りん「じゃあ、もう料理を用意してるからこっちに来て」
とテーブルに招かれる。
テーブルにはお椀が一つ、以前食べた秋刀魚と違う姿にちょっと戸惑いつつお椀の蓋を開けて
かれん「いただきます」
と、つみれをパクリと食べる。
が、しかしすぐにかれんの顔が渋り始めます。
かれん「この間食べた秋刀魚とは味も香りも違うんだけど……これ本当に秋刀魚なの?」
りん「そうですよ。かれんさんの為に、秋刀魚の骨が引っかからないようにつみれにして、さらに……」
と口上を述べてるりんを無視して、かれんはくるみに対して
かれんは「この秋刀魚はどこで獲れたものなの?」
と尋ねる。
くるみ「え?もう旬が過ぎちゃったから冷凍の秋刀魚よ」
かれん「それじゃダメよ。秋刀魚は目黒に限るわ」
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